睡眠時無呼吸症候群の治療について

前回は睡眠時無呼吸症の検査について述べさせて頂きました。今回は治療についてご説明したいと思います。治療は「減量」「マウスピース」「CPAP療法」「外科的手術」の4つに大別されます。一概にどの治療方法が優れているということはなく、重症度や原因に応じてこれらの治療法を組み合わせて検討するのが望ましいです。この中で最も簡単・安価な方法は減量です。肥満気味の方は首・喉まわりの脂肪が気道を狭くしている可能性がありますので、減量は軽症から重症の方まで大変有効です。「マウスピース」は、寝ている最中に口の中には入れ、下あごを上あごよりも前方に出すようすることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぎます。軽症から中等症の方に有効ですが、必ずしも全ての方に効果的な治療方法というわけではありません。マウスピースの作製は手軽で出張時などにも持って行くことができるので、CPAP療法と併用するケースもあり、作成は専門の歯科医にお願いしております。

CPAP療法は重症の睡眠時無呼吸症に最も有効な治療方法として、現在国内や欧米で最も普及しており、多くの研究によって治療効果が証明されています。治療が開始されるとCPAP本体のレンタルならびに鼻マスク、チューブなどの消耗品を含めクリニックから支給され、月一回の通院治療の費用は患者さんの自己負担(3割)で約5000円となります。ただCPAP療法は睡眠時の無呼吸を根本的に解決する治療法ではありません。このために半永久的に使用することが多く、減量などの根本的な治療は継続していく必要があります。

睡眠時無呼吸症候群の診断について

睡眠中は舌などの全身の筋肉が緩み、気道がより狭くなります。そこに空気が通ると周囲の組織が振動していびきが生じます。日本人でいびきをかく人の割合は男性の24%、女性の10%と報告されており、多くの方にとって身近な問題です。いびきを生じる理由として、肥満により首周りの脂肪が増えるなどの体型変化に加え、下あごの小ささや、首の短さなどの日本人に多いとされる身体的特徴も大きく関与しています。いびきは原因によって大きく2つに分けられ、普段はいびきをかかないのに、疲れたときやお酒を飲んだときに限っていびきをかく「散発性のいびき」と、寝ているときはいつもいびきをかく「習慣性いびき」に分けられます。この「習慣性いびき」は、寝ている間の呼吸量の低下や覚醒の有無によって、さらに「単純性いびき」と、「睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき」とに分けられます。「睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき」は日中の眠気を生じ、脳梗塞や心筋梗塞などの発症頻度を高めることから、特に注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群についての検査は本来、1泊2日の入院をして頂き、病院で寝ている間に脳波、酸素飽和度、心電図、筋電図、眼球運動、呼吸、体位、いびきなどの様々なセンサーを装着する終夜睡眠ポリグラフィー検査が行われます。ただ、この検査では時間的制約に加え、個室代を含め2.5~5万円程度の費用がかかるため、最初は自宅で指につける酸素飽和度と鼻につける呼吸センサーからなる簡易検査を勧めております。料金も初診代を含めて3割負担で3500~4000円程度のため、この簡易検査で異常が疑われた方は、前述の終夜睡眠ポリグラフィー検査を行って頂いております。

夜間の頻尿は睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因?

先日、夜間の頻尿で来院された中高年の男性の方がいらっしゃいました。当初は前立腺肥大症と思い診察、検査をしていたのですが、夜間のいびきや無呼吸を家人より指摘されたことがあるとのことでした。このため睡眠検査を施行したところ重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)と判明しました。実際にCPAP治療をしたところいびきや無呼吸はもちろん、夜間の頻尿も改善しました。
これはどういった機序なのでしょうか?
寝ている間に呼吸が止まると心臓が膨らみ血液量が増えます。すると尿を増やして水分を体外に出させるようなホルモンが心臓から分泌されます。このために夜間に尿が増えるのです。夜間の頻尿の原因として睡眠時無呼吸症候群が一因のことがあります。toilet_hinnyou

下がりにくい高血圧の陰に睡眠時無呼吸症候群

高血圧で薬を飲んで頂いても血圧が下がりにくい方がいます。ホルモン異常による高血圧症と並んで、睡眠時無呼吸症候群が背景に隠れている場合があります。実際、当院に来院される方でも同様の状況から睡眠時無呼吸症候群が発覚するケースが多くいらっしゃいます。血圧が下がりにくい方は是非とも周りの方に自分のいびきが大きいか、呼吸が止まったりしていないか聞いてみてください。suimin_ibiki

自分自身も睡眠時無呼吸症候群の検査をしました。

患者様に検査を勧めているものは自分でも試すのが当然との考えから、このたび私自身も睡眠時無呼吸症候群の検査である終夜ポリソムノグラフィー(PSG)を施行しました。検査機器は簡易PSGではなく、full PSGと言われる脳波もついているタイプで装着には15分ほどかかりましたが、装着はさほど難しくもなく、違和感なく検査できました。そして肝心の検査結果は・・・下記のとおりAHI 0.6回/hとほぼ問題ありませんでした。IMG_1704

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