脂質異常症、高コレステロール血症、高脂血症の定義について

この3つを完璧に使いこなすのは一般の方では難しいかもしれません。実際、医療の現場でも、これらの用語が混乱して使われていることが多いのが現状です。
まず、「脂質異常症」ですが、LDLコレステロール(悪玉コレステロール):140mg/dL以上、トリグリセライド(中性脂肪):150mg/dL以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール):40mg/dL未満(いずれも空腹時の血清中濃度)のいずれか一つを満たすことと定義されます。
次に「高コレステロール血症」は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール):140mg/dL以上のことです。
最後に「高脂血症」は、上記の「高コレステロール血症」もしくはトリグリセライドが150mg/dL以上(高トリグリセライド血症)のいずれか、または両方ある状態のことです。
上記のようにかなり定義が重なっているのが混乱に拍車をかけています。
全て覚えるのは難しいでしょうが、微妙に内容が違うことをご理解下さい。

運動療法について

糖尿病や高脂血症、高血圧などのメタボリックシンドロームには運動療法が有効です。とはいえ、食事療法と比較しても継続的に行う上では大変難しいです。運動療法のメリットは病気の改善以外にどのようなものがあるのでしょうか?
①薬の効きを良くする
②筋肉がつき、心肺機能が向上する
③骨粗鬆症の予防になる
④血行が良くなる
⑤活動的になれるために精神的にもよい
⑥ストレス解消
⑦治療法としては比較的安い
などです。
こういったことを実感しながら運動を行うと長続きしやすいと思います。

禁煙外来について

禁煙の社会的な取り組み、喫煙スペースの縮小、タバコの値上げなどにより喫煙者は、20代の女性を除き男女ともに減少傾向にあります。昭和40年には実に男性の80%が喫煙者でしたが、現在では29%まで低下しております。タバコの煙には、4,000種類の化学物質が含まれており、その中には200種類以上の有害物質、50種類以上の発がん性物質が含まれています。さらに副流煙には主流煙と比較して数十倍の濃度の発がん性物質が含まれていることから、質問者の方のように家族への健康被害も見過ごすことが出来ません。タバコの有害物質のなかで、よく知られているのは、ニコチン、タール、一酸化炭素ですが、この中でニコチンは特に依存性の強い物質で、タバコを吸うと数秒で脳に達しドパミンが放出されることで快感を生じます。いつでもタバコをやめられると思っていたのに、なかなか禁煙できないのは、このニコチン依存症が原因です。

禁煙補助薬には飲み薬、ニコチンパッチ、ニコチンガムの3種類がありますが、この中で最も禁煙成功率の高いのは飲み薬です。薬を飲むことで少量のドパミンが放出され、イライラなどのニコチン切れの症状が軽くなり、タバコを吸っても「おいしい」と感じにくくなるといった効果があります。治療期間は3ヶ月で、その間に5回の診察を受けますが、飲み薬を開始してから最初の1週間はタバコを吸ってもよく8日目から禁煙を開始します。飲み薬を使用する場合、多くの方が健康保険を使っての治療が可能で、自己負担3割の方は、総額1万3,000円~2万円程度の費用です。仮に、タバコを1日1箱吸う方の場合、4~8週間分のタバコ代とほぼ同じです。禁煙成功率は約80%と高いため、禁煙したい意志があれば是非治療に挑戦して頂きたいと思っております。

睡眠時無呼吸症候群の治療について

前回は睡眠時無呼吸症の検査について述べさせて頂きました。今回は治療についてご説明したいと思います。治療は「減量」「マウスピース」「CPAP療法」「外科的手術」の4つに大別されます。一概にどの治療方法が優れているということはなく、重症度や原因に応じてこれらの治療法を組み合わせて検討するのが望ましいです。この中で最も簡単・安価な方法は減量です。肥満気味の方は首・喉まわりの脂肪が気道を狭くしている可能性がありますので、減量は軽症から重症の方まで大変有効です。「マウスピース」は、寝ている最中に口の中には入れ、下あごを上あごよりも前方に出すようすることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぎます。軽症から中等症の方に有効ですが、必ずしも全ての方に効果的な治療方法というわけではありません。マウスピースの作製は手軽で出張時などにも持って行くことができるので、CPAP療法と併用するケースもあり、作成は専門の歯科医にお願いしております。

CPAP療法は重症の睡眠時無呼吸症に最も有効な治療方法として、現在国内や欧米で最も普及しており、多くの研究によって治療効果が証明されています。治療が開始されるとCPAP本体のレンタルならびに鼻マスク、チューブなどの消耗品を含めクリニックから支給され、月一回の通院治療の費用は患者さんの自己負担(3割)で約5000円となります。ただCPAP療法は睡眠時の無呼吸を根本的に解決する治療法ではありません。このために半永久的に使用することが多く、減量などの根本的な治療は継続していく必要があります。

睡眠時無呼吸症候群の診断について

睡眠中は舌などの全身の筋肉が緩み、気道がより狭くなります。そこに空気が通ると周囲の組織が振動していびきが生じます。日本人でいびきをかく人の割合は男性の24%、女性の10%と報告されており、多くの方にとって身近な問題です。いびきを生じる理由として、肥満により首周りの脂肪が増えるなどの体型変化に加え、下あごの小ささや、首の短さなどの日本人に多いとされる身体的特徴も大きく関与しています。いびきは原因によって大きく2つに分けられ、普段はいびきをかかないのに、疲れたときやお酒を飲んだときに限っていびきをかく「散発性のいびき」と、寝ているときはいつもいびきをかく「習慣性いびき」に分けられます。この「習慣性いびき」は、寝ている間の呼吸量の低下や覚醒の有無によって、さらに「単純性いびき」と、「睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき」とに分けられます。「睡眠時無呼吸症候群に伴ういびき」は日中の眠気を生じ、脳梗塞や心筋梗塞などの発症頻度を高めることから、特に注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群についての検査は本来、1泊2日の入院をして頂き、病院で寝ている間に脳波、酸素飽和度、心電図、筋電図、眼球運動、呼吸、体位、いびきなどの様々なセンサーを装着する終夜睡眠ポリグラフィー検査が行われます。ただ、この検査では時間的制約に加え、個室代を含め2.5~5万円程度の費用がかかるため、最初は自宅で指につける酸素飽和度と鼻につける呼吸センサーからなる簡易検査を勧めております。料金も初診代を含めて3割負担で3500~4000円程度のため、この簡易検査で異常が疑われた方は、前述の終夜睡眠ポリグラフィー検査を行って頂いております。

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